第6話『未来への花』

PART 3

吟子
本日は、集ま……お、お集まりいただき、ありがとうございますっ!
吟子
あ……そ、そのっ!
皆さんが、私たちを……じゃなくて!
吟子
蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブを、
応援したいと言ってくれてるって聞きまして……!
吟子
私たちと皆さんで、一緒に……。
な、何か、できないかとっ……!
吟子
ふぅ……。
姫芽
吟子ちゃんお疲れ~。
緊張しちゃった?
吟子
あれだけの人がずらっと並んでたら、さすがにね……。
花帆
何でだろうね?
ステージだったら、大勢の前でも堂々とできてるのに。
吟子
だって、ライブは一応、私たちのことを好きな人たちが、
好きで見に来てくれるわけだし……。
吟子
そうじゃないときもあるけど、多少は気が楽になるっていうか……。
花帆
じゃあ、世界中の人がみんな自分を好きだって思いながら生きてみたら、
どうかな!
吟子
できるわけないでしょ!?
小鈴
でも、吟子ちゃんのおかげで、みんな協力してくれるって話になったよ!
セラス
花ちゃんが言った通りになったね。
花帆
ね! 吟子ちゃんが金沢を盛り上げたい!
って言ったとき、みんなうれしそうだったもん。
吟子
私の話だけでうまくいったわけじゃないよ……。
なんだったら私は、緊張してガチガチだったし……。
吟子
さやか先輩、助かりました。
さやか
いえいえ、わたしはみんなで考えた企画を説明しただけですよ。
姫芽
企画、好評でしたね~。
花帆
そうだね!
金沢チャレンジ! スタンプラリー!
姫芽
各ポイントに待ち受けるさまざまなチャレンジをクリアして~?
花帆&姫芽
スタンプをゲットせよ~!
あれは、ただのスタンプラリーじゃなくて、
チャレンジという形にしたのがよかった。
小鈴さんのアイディアが秀逸だったね。
瑠璃乃
だよねえ。 チャレンジなら、例えば博物館みたいなところでも、
クイズを出すとかイベントの形にもっていけるし。
花帆
来てくれた人が、楽しみながら金沢の伝統に触れていける!
これには実行委員長もにっこり!
小鈴
あれ? 吟子ちゃん、どうかした?
吟子
確かに、いいアイディアなんだけど……。
吟子
何か、あと一押し、
来てくれた人が受け入れやすいものにできないかなって……。
小鈴
えっ? スタンプラリーって、すごく受け入れやすそうじゃないかな?
街の人たちもそんな反応だったよね?
吟子
もちろん、スタンプラリー自体は問題なくって……。
さやか
わたしたちのスタンプラリー以外にも、
期間内にはさまざまな催しが行われることになりました。
さやか
街のいろいろなお店や施設が露店を出すということですし、
きっと、街全体がお祭りムードになると思います。
小鈴
ワクワクしますよね!
さやか
そう、ワクワクする感じになるはずです。
そこに惹かれて来てくれる人も大勢いると思うんですが……。
さやか
それでも、何か心配事がありますか?
吟子
……私、金沢の伝統は、触れてもらえさえすれば、
誰でもその良さが分かるものだと信じてるんです。
吟子
ただ、普段から伝統に興味を持ってくれている人は、
決して多くないとも思ってて……。
姫芽
あ~。
姫芽
スタンプラリーって言っても、伝統の施設を巡ることには変わりないから、
もともと興味のある人しか、やってくれないのかも……ってこと~?
吟子
うん。 だから何か、一目見て、『あ、面白そう』
って思ってもらえるようなアイディアがあれば、いいなって……。
ふむ……。
となると、戻ってからまた作戦会議かな。
さやか
ただ、アイディアは思いつくかどうか次第ですからねえ。
瑠璃乃
一瞬のひらめきが舞い降りるかどうか……!
姫芽
うちには、そういうのが得意な方がいらっしゃいますけれども~。
花帆
むむむ……。
セラス
がんばれがんばれ、花ちゃん。
吟子
いやいや……。
いくら花帆先輩でも、そんなに都合よく思いついたりは……。
花帆
ハッ! 思いついた!
吟子
え!?
花帆
スタンプラリーに、お話を乗っけるんだよ!
吟子
へ……?
花帆
あたし、前に配信で、みんながファンタジーの世界に行ったら
どんな感じなのかなーって話をしたことがあってさ。
さやか
ハスノソラファンタジーですね。 わたしが魔法使いだったり、
瑠璃乃さんがエルフの弓使いだったりっていう……。
小鈴
花帆先輩らしい、夢のある素敵なお話でした!
吟子
いや、内容は、知ってるけど……。
花帆
つまりね、モチーフはなんでもいいんだけど……
来てくれた人に普段はできないような、
とびっきり楽しい冒険を体験してもらいたいの!
姫芽
それってええと~、スタンプラリーのポイントでやることを、
RPGのクエストに見立てるって感じですかね~?
花帆
そう、例えばそんな感じ!
花帆
ハスノソラファンタジーにするなら、
この街をファンタジーの世界っていうことにして、
遊びに来てくれた人は世界を救うための旅人さん!
姫芽
色んな場所を巡って、クエストをこなして、アイテムを手に入れたりして~?
花帆
そうそう、あたしたちも物語の登場人物になって、
その旅を助けたり、一緒に戦ったりして!
姫芽
それなら、普段、伝統のことにそれほど興味がない人たちも、
気になっちゃうかもしれないですね~。
花帆
あたしも去年、吟子ちゃんのおうちに遊びに行ったとき、
伝統体験ツアーを開いてもらって、それで面白さを知ったからさ。
小鈴
あのときは、吟子ちゃんがわざわざしおりを作ってくれたんですよね!
福井から来た徒町にとっても、とても新鮮な体験でした!
へえ。
セラス
え? 第二回を開くご予定は……!?
吟子
別に、セラスさんがやってみたいんだったら、いつでもいいけど……。
花帆
だからね、とりあえずやってもらおうって意見には、大賛成!
花帆
伝統に触れながら世界を救っていく冒険にしちゃえば、ワクワクドキドキして、もっともっと深くのめり込めるはずだよ!
吟子
な、なるほど……。
吟子
花帆先輩の、なんだかよくわからないけど周りを巻き込む力が、
その企画にもすごく発揮されてる気がする……!
花帆
ありがと!
……あれ? 褒められてるよね?
瑠璃乃
花帆ちゃんのいっちばんいいところが出てるねえ。
花帆
それがあたしのいちばん!?
もっと他にないの!?
さやか
まさか本当にひらめくとは思いませんでしたが……。
どうですか? 吟子さん。
吟子
はい。 私が心配してたことは、たぶん、ぜんぶ解決すると思います。
これならきっと、面白そうって興味をもってもらえるんじゃないかと……!
花帆
よかったぁ!
さやか
では、これでやってみましょう。
いろいろと準備が必要になるね。
瑠璃乃
どう手分けするかの打ち合わせは、これからみんなで考えるとして……。
大事なお仕事が、あるよね。
吟子
はい。
ですから……。
吟子
あの、お話は、花帆先輩に作ってもらいたいんだけど……。
花帆
あたしでいいの?
吟子
うん。 もともと、ハスノソラファンタジーを考えてたのは花帆先輩だから、
なにかイメージがありそうだし、それに……。
吟子
花帆先輩の作るお話が、いちばん、
みんなをワクワク、ドキドキさせてくれそうだから……。
吟子
……どう、かな?
花帆
もちろん!
それじゃあ、あたしに任せて!
蓮ノ空女学院の校長室(あるいは生徒会長室など?)で、説明中のさやか。
近江町市場にて、協力を取り付けるための説明をしている瑠璃乃とセラス。
近江町市場にて、協力を取り付けるための説明をしている瑠璃乃とセラス。
そして自室でハスノソラファンタジーのお話を考えて、缶詰中の花帆。